商品企画システム化への道(6)~P7-2000とPLANPARTNERの発表

2000年のP7改訂の方向

1995年に「商品企画七つ道具~新商品開発のためのツール集」を出版して、P7を広めたのですが、実を言うと私を含めた著者全員が満足していた訳ではなく、「実績を積んで、数年経ったらもっと良い改訂バージョンを出そう」と考えていました。

それを実現したのが2000年です。
奇しくも記念すべき日産・X-TRAIL発売の年と重なりました。

この5年間に,数十回に及ぶ講演、セミナーでP7の有効性を訴え,多くの企業から賛同をいただきましたし、ゼミには商品企画を動機として成城大学を受験する熱心な学生が参集し、多い年には年間10件以上もの様々な産学協同の商品企画プロジェクトを実施するに至りました。実践で活用する場が際だって豊富になり、また他の著者の方々も様々な経験を積んできました。このような中で、次のような点を改善することになりました。

① グループインタビューは役に立つ反面、一般の企業の方が直ちに活用するには特に司会者が養成しにくいものです。外部に依頼するにも人材確保が難しいことが多いです(特に地方都市ではこの種のプロが全くいません)。

そこで、グループインタビュー以外に、誰でも活用でき、一定の成果を期待できる手法を探し、当時日産自動車・総合研究所商品戦略室で市場リサーチの研究をされていた讃井純一郎氏(現・関東学院大学・人間環境学部人間環境デザイン学科教授)が開発された「評価グリッド法」を論文で見出しました。これは素晴らしい!と直感しました。インタビューが個人の能力に拠らず一定のシステムとして完成されており、1対1のためいつでもどこでも相手の都合に合わせてできます。グループインタビューの問題点(司会の能力が重要、システマティックでない、時間・場所・費用がかかる、後でまとめるのが大変)と正反対の性質を持っていたため、メンバー全員の賛同を得て讃井氏に私達の研究会に来ていただき直接学びました。同氏もP7の中に導入され広く使われることに強く賛同されたため、グループインタビューと合わせて2手法で「インタビュー調査」と名称を変更しました。 

② 発想法の「発想チェックリスト」は他の手法と比し内容が小さく、同列にはならないため、「発想法」として大きく1つにまとめた方がよいと考えました。

③ 表形式発想法の「組み合わせ発想法」(商品の5W1Hや属性を列挙して新た組合わせを創る方法)は残念ながら余り使いませんでした。むしろ新たに創った「焦点発想法」が簡便ながら効果的と思われました。焦点発想法は対象商品と無関係な何かに焦点を当て、そこから誘発されるワードを書き、その性質(中間アイデア)を基に新らしいアイデアを出す方法で、初心者でも1時間に大体30件、トレーニングすると100件くらいのアイデアをポンポンと出せるようになります。

④ 発想法で良いアイデアがたくさん出ても,これを絞り込むプロセスが難しいです。アイデアを評価し選択する方法として、評価項目にウェイトを付けて点数評価する通常の「重み付け評価法」に加えて、AHP(Analytic Hierarchy Process、一対比較評価法)のような最新の科学的手法を活用してはどうかと考えました。後者はアイデア同士、評価項目同士をペアで比較評価したデータから全体の評価点を決める方法です。色々な分野で活用事例が挙がってきており、提案して使ってみよう、ということになりました。後述のP7ソフトウェア、PLANPARTNERで厄介な計算はやってもらえる、と考えました。

これがP7-2000!

そこで、P7の中身を次の図のように改訂し、区別する場合は旧版をP7-1995,改訂版をP7-2000と称することにしました。これにより、手法間のバランスが非常に良くなったために、モジュール的に活用するのも楽になってきました。

    

  

テキストとしてはパイオニア、リコー等での優秀活用事例が次々に公表されたので、事例編を新たに作り、易しい入門編、手法の詳細版と目的で分けた方が使いやすいと考え、
3分冊の「商品企画七つ道具実践シリーズ」

  • 第1巻:「はやわかり編」(入門編、2000年6月刊)
  • 第2巻:「よくわかる編」(手法解説編、2000年6月刊)
  • 第3巻:「すぐできる編」(事例・ソフトウェア編、2000年11月刊)

を一気に出版しました。著者も前回の5名から、神田研究室出身の丸山一彦氏(当時富山短期大学、現在和光大学)を加えて全員大車輪の奮闘で執筆しました。特に私は全3冊の編著者になり、「だらだらと1冊ずつ出版するのは良くない」という出版社、著者全員の合意から「すべてを2000年の内に出版する」という猛烈なスケジュールをこなすことになりました。毎週土日に手弁当で千駄ヶ谷にある日科技連出版社の小会議室に何人かで籠もって原稿改訂、校正を繰り返したのは今や懐かしい思い出です。幸いにも全員の協力で2000年中に出版にこぎつけ、翌年に日経品質管理文献賞(日本経済新聞社が授与する品質管理関係文献の優秀賞)に選ばれたのは大いなる喜びでした。

    

    

P7ソフトウェア・PLANPARTNERについて

前記シリーズ第3巻には日本電気ソフトウェア(株)(現在のNECソリューションイノベータ(株))が制作したP7のデータ分析用ソフトウェアPLANPARTNERの解説も入れました(ソフトウェアは現在絶版)。PLANPARTNERは著者達とソフトウェア専門家の協同で1996年に開発したもので、Excelに追加して使う(アドイン)形式で、当時としては画期的な内容であったと思います。インタビュー結果のまとめやアイデア発想のシート、品質表作成機能なども入っていましたが、それらは手作業でも作成できるため、定量的手法(アンケート調査、ポジショニング分析、AHP、コンジョイント分析)が活用の中心となりました。データをExcelで入力し、結果もExcelで得られるというメリットは大きなものです。

    

    

ただし、以下のような問題がありました。

・高い目の有料ソフトであるため、大学やセミナーでの使用に制限が発生し、広く普及させるには価格という壁が発生しました。

・最も重要なコンジョイント分析で組み合わせ案の評価が絶対値(~点)でなく、相対順位(1位、2位、・・・・)でしかできませんでした。同じような評価のサンプルを無理に順位化することになり、これは大きな問題でした。

・AHPは実際使ってみると評価対象や評価項目が多いと組み合わせて一対比較するため、仮説案が10件以上あると、実用的ではないと判明しました。

・定性手法(インタビュー調査、アイデア発想法、品質表など)ではほとんど使う必要がありませんでした。

    

PLANPARTNERは残念ながら大幅改訂を行う前に絶版となり、私はフリーソフトウェアである「R」に着目し、2009年3月にRを用いたプログラムを監修書「商品企画のための統計分析~Rによるヒット商品開発手法」(オーム社)で公開しました(石川朋雄・小久保雄介・池畑政志氏共著)。その後、2013年のP7の新システム「Neo P7」の発表を契機に、Rを用いた本格的なソフトウェア「P7かんたんプランナー」の公開・無料頒布へと動き出します。

   

商品企画システム化への道(7)へつづく
お楽しみに。

商品企画システム化への道シリーズ
(1)昔は「商品企画」≒「企画書」だった?
(2)ついにP7公表へ
(3)初めての産学協同研究
(4)P7で次々にヒット商品が誕生!「リコー・複写機」「パイオニア・ミニコンポステレオ」
(5)P7でヒット商品が誕生!「日産自動車・X-TRAIL」
(6)P7-2000とPLANPARTNERの発表
(7)2つの研究会でP7活用の拡大

   

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神田範明

一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会 会長、成城大学 名誉教授
専門分野:商品企画、市場調査、経営統計学、品質管理。 1949年8月生まれ、東京工業大学工学部経営工学科卒、同大学院修了。 その後名古屋商科大学に勤務し、企業での商品開発に関する品質管理の体系化や学生指導の必要性から商品企画の世界に入りました。 1993年成城大学教授となってからは商品企画の手法を体系化した「商品企画七つ道具」を発表(1994年)、実践応用に邁進しながらも次々に手法の開発や改良に努め、神田ゼミを成城大学随一の存在に育て、有名企業との産学協同研究やコンサルティングに現在も休みなく奮闘しています。

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