商品企画システム化への道(1)昔は「商品企画」≒「企画書」だった?

JMLA会長の神田です。WAKU LABOでは私が作ったNeo P7(新・商品企画七つ道具)というシステマティックな方法を皆様に紹介し、お勧めしています。
この基になったのが1994年に発表したP7(商品企画七つ道具)です。
ここではその変遷やエピソードを語り、Neo P7を皆様により深く理解していただく一助になれば、と思っています。

    

商品企画は科学的手法になじまないという固定概念

1990年、日本の品質管理(QC)の総本山、(財)日本科学技術連盟(以下、日科技連と略します)で新たな手法開発を目指す動きが始まりました。当時、QC関係ではいろいろな手法が出揃い、商品のレベルアップや設計・製造の効率化に大いに貢献していました。

企業内ではQCサークルという改善のための小集団活動が活発に行われました。主に製造工程で不良品が発生したり、効率が悪くなる原因を突き止めて改善するのがその内容です。今ではなかなかできないことですが、当時は残業してでも職場の仲間が集まって改善活動するのがよくありました。

QC手法と企業人の努力に支えられて「日本製=品質が良い=安心」という評判が全世界に広まり、日本経済は絶好調を迎えて来たのです。

製造の職場で始まったQC活動はやがて事務営業の仕事の効率化にも貢献し、開発、設計とモノづくりの上流の方にまで普及しましたが、そのスタートラインである、商品企画まで来てパタリと停止しました。

何しろ「商品企画=感覚、直観、ひらめきの世界」というのが常識で、QCのような科学的手法にはなじまない、というのが大方の見方でした。

    

固定概念を覆すことに成功

日科技連ではTRG(Total quality control Research Group)の名で7つの分野で若手の研究者、企業人のグループ(WG)を作り、QCの新たな進歩を図るべく、月1回の研究会を4年に及び開催しました。

その中で最終的に成果の出版にこぎつけたのが「戦略立案(を科学的に行う)」と私がリーダーを務めた「商品企画(を科学的に行う)の2つのWGです。

      

研究の変遷 統計⇒リサーチ⇒商品企画

私はそれ以前に統計分野の「多変量解析」を研究し、名古屋の大学でも教えていました。
トヨタ自動車始めトヨタグループ数社を指導していました。

多変量解析を用いて、マーケティングの市場調査を科学化することをテーマに研究発表しをていましたので、「商品企画」は、まあ、近い分野ということで受けることになったのですが、正直言って「難しいな!」「こりゃ大変だ」というのが第一印象です。


書店の「商品企画」コーナーにあったのは「企画書」の本だった?!

まず最初に、従来の成果がわかりそうな文献を求めて東京駅近くの「八重洲ブックセンター」に行きました。当時日本最大の書店で、最新の本が揃っていました。

探したら、ありました!
何と「商品企画」のテーマで棚一つ分です。優に200冊はあったと思います。
嬉しさの余り、「ワオー」と思わず叫んでしまいました。
まずは良い本を何冊か買って、じっくり読もうと決意し、そこに2~3時間は粘ったと思います。
 
しかし、その喜びはあっという間に打ち砕かれてしまいました。
本を取ってはパラパラとめくるうちに、どんどん暗い気持ちになって来ました。
売られている本の半分、いやそれ以上が「企画書」に関する内容で、「企画書の書き方」「ヒット商品の企画書」「通る企画書」・・・・・・。なるほどと思う良い本もありましたが、多くの本の主旨が「企画書を通すこと」なのです。こうやって構成して、こういう文章を書いて、インパクトを強めて・・・・・。

つまり、商品企画≒通る企画書作りでした。
これは大きなショックでした。

インタビューやアンケート調査などの個別手法の専門書もありましたが、それらも大した内容ではなかったのです。結局、勢いで数冊買いましたが、後でじっくり見直すと、余り参考にならない本ばかりでした。

     

世界の誰も手を出していない未開の分野

もちろん図書館の蔵書も調べ、海外の文献や関連する学会の情報も集めましたが、なるほど、と思うものは皆無でした。

つまり、「世界中の誰もが手を付けていない未開の分野」であることは間違いないのです。

商品企画全体を科学化する、その壮大なテーマは私にとって今までにない大きなチャレンジであり、ゾクゾクするような闘志が湧いて来たのです。

もちろん、その目標は「確実にヒット商品を生む、失敗のない方法論の樹立」です。
可能かどうかは全くわかりませんでしたが、とにかく手探りの状態で研究活動がスタートしました。

高村光太郎の有名な詩「道程」の冒頭「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」を思い出しました。
まさに、そのような心境でした。



(その2に続きます、お楽しみに)

   

商品企画システム化への道シリーズ
(1)昔は「商品企画」≒「企画書」だった?
(2)ついにP7公表へ
(3)初めての産学協同研究
(4)P7で次々にヒット商品が誕生!「リコー・複写機」「パイオニア・ミニコンポステレオ」
(5)P7でヒット商品が誕生!「日産自動車・X-TRAIL」
(6)P7-2000とPLANPARTNERの発表
(7)2つの研究会でP7活用の拡大
(8)Neo P7とP7かんたんプランナーの発表
(9)P7事例集と新版・簡単プランナーの制作

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感動商品を生むためのメソッド『Neo P7』を正確に深く理解するためのカリキュラム構成です。講師は『Neo P7』開発者である神田 範明 名誉教授が担当し、丁寧にわかりやすくお伝えします!
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神田範明

一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会 会長、成城大学 名誉教授
専門分野:商品企画、市場調査、経営統計学、品質管理。 1949年8月生まれ、東京工業大学工学部経営工学科卒、同大学院修了。 その後名古屋商科大学に勤務し、企業での商品開発に関する品質管理の体系化や学生指導の必要性から商品企画の世界に入りました。 1993年成城大学教授となってからは商品企画の手法を体系化した「商品企画七つ道具」を発表(1994年)、実践応用に邁進しながらも次々に手法の開発や改良に努め、神田ゼミを成城大学随一の存在に育て、有名企業との産学協同研究やコンサルティングに現在も休みなく奮闘しています。

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