GDP統計に見る国の姿(2)

今回は、「GDP統計に見る国の姿」の後半です。

前半は「GDP統計に見る国の姿(1)」からお読みいただけます。

私たちがご提供している商品企画NeoP7システムの後半に、統計手法が登場します。そのNeoP7の技術を用いて、企業様の商品企画を共創型でご支援しています。ご支援の一環として「統計って何?」というご説明をしています。

前回と今回と2回に分けて、ニュースでよく聞く「GDP」をテーマに、統計について、嚙み砕いてお話ししています。

衛星写真で判明した本当のGDP

前回の続きからお話します。

米国シカゴ大学ハリススクール(公共政策大学院)ルイス・マルティネス教授がGDPのウソを客観的に打破する画期的な手法を開発しました。

以下の論文
How Much Should We Trust the Dictator’s GDP Growth Estimates?       
(独裁者のGDP成長推定値をどれほど信用すべきか)
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3093296(2021.12)
を参考に、衛星が捉えた夜間の光の画像からGDPの実態を探ることにしましょう。

まずは、衛星画像で見る世界の夜景です(2016年)。

以下の画像は下記サイトから引用、地名・国名のみ筆者が加筆させていただきました。

東京やニューヨークの夜は光で溢れかえっていて、壮観ですね。

関東や北米各地、インドもなかなかのものです。一方、北朝鮮やロシアは真っ暗。中国も日本の26倍もの広大な国土、10倍以上もの人口を持つ割には光が強いのは香港、上海、北京などごく一部に限られています。

さて、このような衛星画像を通じて、ある国の放つ夜間の光量が分かると、かなり信頼性の高い経済成長の指標となることが判明しました。

NTL(衛星画像から集積した夜間光量)とGDPの関係

マルティネス氏は世界銀行が集計している世界184カ国のGDPデータと、アメリカ海洋大気庁が運用している防衛気象衛星計画が観測した各国の夜間照明量とを比較して関係を見出す研究を行いました。

下図「NTL(Nigtht Time Lights 夜間光量)成長率とGDP成長率の関係」はその一つです。

NTL(衛星画像から集積した夜間光量)とGDPの各国における平均成長率を散布図にしたものです。

は非自由国家(独裁国家)、は自由国家(民主国家)と判断される国を表します。

なお、この「自由の程度による国家分類」は米国に本部を置くNGO団体Freedom Houseが発表する「自由」「半自由」「非自由」の判定「Freedom in the World」によります(下図)。

どちらの国家群でも、NTLとGDPの平均成長率には直線的な関係があり、引かれた直線は各国家群における回帰直線(関係を最も誤差なく表す直線)を示します。

このようなことから、NTLが成長する国はGDPも直線的に成長する、と推測できるようになります。

GDP値が信頼できる国でNTLとの関係を見出せば、他の(信頼できない)国のNTLから真のGDPが推定できるようになります。

下図は、上下の位置で各国の2002年~2021年の19年間におけるGDP成長率(対2002年比)とそのNTLからの推計値を表しています。

上下で位置がずれている国は、公表値と推計値が異なる、つまり虚偽の発表をしている可能性が高いことになります。

また円の大きさは2021年のGDP公表値を表しています(これもまた虚偽の可能性がありますが。。。)。

自由国(民主国家)では公表値と推計値の差異は少なく、日本は全くありません。

アメリカは若干公表値が大きめになっています。

韓国はだいぶ差があります。ペルー、ガーナはかなり差があります。自由度が悪くなるにつれて差が開き、非自由国(=独裁国家)では極めて差が大きくなります。

19年間での独裁国家のGDP成長率の平均は147%ですが、真の値は平均76%(約半分!)と推測されます。中国、エチオピアは特に差が極端です。
つまり、独裁国家では虚偽GDPが横行していると判断されます。

独裁国家では元首の指示により、どのようにも数値を操作することができます。自国が優れていて、躍進しているように見せることで、他国から資金や人材を呼び込み、また、他国への進出もしやすくなります。しかし、各官僚や各地域の首長は、元首の機嫌を損ねれば直ちに粛清されてしまいますから、「良い数値」を上げるしかないのです。その結果、独裁国家は高成長で大躍進が多い、というおかしなことになるわけです。仮に(百歩譲って)中央政府が正しく真面目に統計作業を行っていたとしても、各部署・各地方から報告される数字にウソがあれば、全体は推して知るべし、となります。

どう受け止め、判断すべきか

私達は感覚の入りやすい文章と異なり、数字やグラフを見ると、ついつい客観的で正確であると信じ込んでしまいがちです。

次の2つを比べて下さい。

 A.明日の東京はとても暖かくなります。もう春本番の陽気です。
 B.明日の東京は最高気温が23度、今日よりも6度高くなり、平年を5度上回ります。

Bは数値で説明している分、「正しい予報」と思ってしまいます。
Aはわかりやすいですが、今一つ信頼感がありません。

先のGDPのように数字自体が間違っているとなると、いくら素晴らしい手法で綿密に分析を重ね、高度なモデルを使って予測を行っても、何の意味もありません。

国の基本データが誤っているとしたら、あらゆる統計がそれと矛盾しないようにきれいに組み立てられている、と考えるべきでしょう。

GDPが*%UPならウチの部署や地域の数値は△%上がらないとおかしい、という発表になるはずです。

それを使って構築した将来計画も、投資も、細かな施策も必ずどこかで破綻をきたします。中国のGDP成長率(公表値)は毎年必ずプラスですが、現在は完全にマイナス、将来予測に欠かせない人口は30%の過大発表、失業率は50%もの過小発表、と私は推測しています。

皆さんはどう考えますか?

よく調べ よく考え よく検証する

さて、私たちは、商品企画にも統計を組み込んで再現性のある企画を推奨しています。

商品を使用する顧客を無視した企画をすることはできません。

  1. よく調べ
  2. よく考え
  3. よく検証する

この三原則を大事にして再現性ある企画の実現をご支援しています。

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神田範明

一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会 会長、成城大学 名誉教授
専門分野:商品企画、市場調査、経営統計学、品質管理。 1949年8月生まれ、東京工業大学工学部経営工学科卒、同大学院修了。 その後名古屋商科大学に勤務し、企業での商品開発に関する品質管理の体系化や学生指導の必要性から商品企画の世界に入りました。 1993年成城大学教授となってからは商品企画の手法を体系化した「商品企画七つ道具」を発表(1994年)、実践応用に邁進しながらも次々に手法の開発や改良に努め、神田ゼミを成城大学随一の存在に育て、有名企業との産学協同研究やコンサルティングに現在も休みなく奮闘しています。

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