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小林記録紙からの申し出
「商品企画七つ道具」出版を目指して執筆に励んでいた1995年春か夏に、愛知県刈谷市の小林記録紙株式会社(現・小林クリエイト株式会社)の開発部長A氏(94年6月のTRGシンポジウムに出席されていたようです)が私の研究室に来られました。初めての産学協同研究の申し出をいただいたのですが、次の言葉に驚かされました。
「P7は非常にいいと思います。こういうしっかりした商品企画の考え方や手法が欲しかったのです。現在著書出版を準備されているとのこと、それが出版されると大手企業が殺到するでしょうから、その前にウチと一緒に実験的にやらせて下さい。」
企業への講演やセミナーはあっても、企業と一緒に商品企画を行う経験などなかった私にとっては、天にも昇る思いでした。しかも、最初から、「新たなインクジェットプリンタ用紙」他の2テーマでした。同社はBtoBのメーカーで印刷用紙、帳票、DM関係等手広く作っていましたが、一般市場向け(BtoC)用品にも関心を持っていました。
いよいよ企画プロジェクト開始!
同時にある大手酒類メーカーからも依頼をいただき、次の96年度は第2期のゼミ生が卒論で3つのテーマで同時に産学協同研究に取り組むことになりました。ゼミで希望者を募集したところ、女子1名が「プリンタ用紙」担当に決定。学生にも私にも初めてだったため、元気の良い(勇敢な)学生のみが手を挙げるという状況でした。
96年に東京・八丁堀にあった東京支店の方々数名とP7講習会を実施後、下図のような流れで進行しました。
学生と社員の方々で議論を交わしながら、ワクワク感と緊張感を持ちながら進めましたが、何しろ私も含めて皆未経験です。暗中模索しながら、アイデアを出し、学生達をターゲットにインタビューやアンケート調査を進めて行きました。アンケート調査の実施が12月上旬、コンジョイント分析アンケート実施が2月上旬、卒論提出が毎年1月中旬なので、最終結果が出ないままポジショニング分析(下図)までで卒論にして、後からコンジョイント分析を実施したと思われます。
「ポストdeシール」商品化!
ポジショニング分析の結果、8仮説の中で「オリジナルハガキ作成キット」が最高の位置にあり、迷わずこれを採用することになりました。
ただ、まだ抽象的で、具体的イメージには至っていないので、更に商品化できるアイデアを探索し、その中で同社が扱っていた「シールで(個人情報を)隠すハガキ」が利用価値がありそう、ということになりました。
個人用として販売しているものは市場になく、価値を高めるため、シールの表面とハガキの2面に印刷をして自分で接合するシールハガキを発案しました。
印刷されたシール表面を見て、次にそのシールを剥がすと印刷されたハガキが現れるという驚きの構造です。
コンジョイント分析でコンセプトやネーミング案、デザイン案を組み合わせてアンケートを行い、「ポストdeシール」という商品案が完成しました(当初ハガキ+シール5セット500円、その後シールのみ20枚1500円)。
この商品は98年3月に発売され、その後ロングセラー商品となりました。
同年5月には日本品質管理学会で発表され、P7による最初のヒット商品事例の公開となりました。
後日談
今思い出すと、全くの新規商品の企画のため、当初から仮想商品のアイデアをどんどん出してインタビューやアンケート調査を行い、ポジショニング分析で出た最良方向に対して更にアイデアを出し、一方で試作をいくつかしながら最終案をまとめるという、なかなかGOODな(今のNeo P7に近い)流れを作っていました。
余談ですが、私の出した「ペーパークラフト作成キット」は、当時全く世の中にない画期的アイデアでしたが、若い学生諸君から「オジン臭い」と一蹴されてしまいました(笑)。確かに理想ベクトルの正反対に位置します。(現在では無料でダウンロードして自宅で印刷できる作品が多数公開されています)
その前後に、リコー(株)がコピーを本体内部に出す省スペースの画期的コピー機を独自に開発し、大ヒット商品になりました。実はコンジョイント分析で社内での反対を説得した、素晴らしい活用事例でした。
97年頃、業績が非常に低迷していた日産自動車から商品企画指導の打診があり、いよいよ巨大なプロジェクトに関与することになりました。
(つづく)
商品企画システム化への道シリーズ
(1)昔は「商品企画」≒「企画書」だった?
(2)ついにP7公表へ
(3)初めての産学協同研究
(4)P7で次々にヒット商品が誕生!「リコー・複写機」「パイオニア・ミニコンポステレオ」
(5)P7でヒット商品が誕生!「日産自動車・X-TRAIL」
(6)P7-2000とPLANPARTNERの発表
(7)2つの研究会でP7活用の拡大
(8)Neo P7とP7かんたんプランナーの発表
(9)P7事例集と新版・簡単プランナーの制作
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神田範明
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