商品企画を目指す皆さんへ~文系と理系の狹間で

商品企画は論理で攻めるワザ

 昔の商品企画というのは、思いつきのアイデアでカッコいい企画書を書いて、上を納得させれば良い、といった風潮がありました。

 出せば売れるような成長期はそれでも良かったので、商品企画担当者は憧れの仕事になっていました。特に文系学生は「どんな仕事に就きたいか?」「希望の職種は?」と聞かれると「商品企画」と答える者が圧倒的に多かったのです。統計があるわけではありませんが、複数の人事担当者や学生諸君の話からすると、本当だと思います。大多数の学生は確たる知識も経験もないのに、マスメディアの(いい加減な)描写に誘導されたこともあり、単なるイメージで目を輝かせて答えていました。

 しかし、日本経済が低成長になり、内外共に競合がひしめき合う時代に突入しました。

 ご存知のように、日本の周辺諸国は日本や先進諸国を手本にして技術を学び、(表面的には)日本の商品に劣らないレベルのモノを低価格で供給するようになりました。中国、韓国などはパクリ商品が多いとはいえ、まずまず独創的な商品も出せるようになりました(品質レベルでは相当の格差がありますが)。国内的にも同様の商品開発をできる会社が増えて、その結果類似商品が巷に溢れ出し、消費者は本当に選択に迷う時代になって来ました。

 すると、「確実に」結果を出せる商品(=勿論、売れる商品)を企画するのが商品企画ということに変化しました。いや、むしろ本来の、当たり前の姿が求められるようになりました。

 ただし、経営者が「他社同様の商品を売れば失敗がないので良い」と考えるか「断然異なるスゴイ商品を生んでヒットさせよう」と考えるかで大きく方向が変わります。

 積極果敢な(有能な)経営者は当然後者に進もうとしますが、どんな会社でも、次のような大きな壁が立ちはだかります。

(1)画期的な商品アイデアを創出すること。

(2)売れるかどうか適確に推定すること。

 この2つは現在でも、商品企画の最大の課題です。

 アイデアをポンポン出してくれて、ヒット商品になるものをサッサと断定してくれるAIでもできたら、商品企画も変わって来るでしょうね。AIと言っても結局は人間の作るプログラムですから、膨大な情報を集めてもっともらしく(上手に、格好良く)提示するだけです。「モーツアルト風の音楽を作れる」AIは作れますが、真にオリジナリティを持ったモーツアルト自身は作れません。アイデアもそうで、「なるほどいいな!」と思わせる画期的アイデアを生み出せるAIは存在しません。
 (1)は、どちらかと言うと文系の方が得意で、(2)はどちらかと言うと理系の方が得意です。改めて、この2点を見ていきましょう。

(1)アイデア創出~画期的な商品アイデアを創出すること。

 現状の技術を知れば知るほど限界や可能性がわかるため、理系の方はついつい枠を狭めてしまいます。「ある程度できそうな範囲で考えよう」、極端に言うと「自分の首を絞めないようにしよう」となってしまいます。

 文系の方は技術知識が乏しい分、できるかどうかなど関係なく「こんなのあったらいいな」「こんなの欲しいな」から発想します。その分、自由でユーザー目線に近いアイデアを出せるので、喜ばれます。しかし実現できないアイデアが多く、残念な結果に終わることも多いです。

 理系の方は「このような条件で最も良い答えを求める(最適解)」は得意ですが「とにかく画期的なアイデア」と言われると困惑し、「画期的とは、どのような条件を言うのか?」などと真面目に考え込んでしまいます。しかし、そうは言っても実現可能性を常に頭に入れて考えますから、「技術的にできる範囲でなるべく売れそうなモノ」を出してくれます。

 もう一つ、理系の方の困る点があります。理系人間は技術の研究や応用が大好きですから、新しい道具や新しい原材料、新しい方法などを発明・発見したら、活用したくてしょうがないのです。それがある種の「必要性」から出て来た場合は良いのですが、ニーズやウォンツと結び付くかどうかわからない技術からアイデアをひねり出すことがあります。

 ある部品会社に伺った時に「マグネットをいかなる形状にも加工成型できる技術」を発明して特許を取ったと自慢をされた後、「どう使ったら商品になるかわからないので、アイデアを出すヒントをもらえないか」と聞かれたことがありました。面白いのですが、「できちゃった」技術を商品企画に結び付けるのはなかなかの難物であり、失敗の危険性が高いものです。

 やはりNeo P7の手法でニーズから仮説を発掘しておいて、必要な技術とドッキングさせる進め方が優れています。

感動=創造性×潜在ニーズ発掘度_システマティックな商品企画法neoP7_日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)

(2)売れる可能性を検証、推測する~売れるかどうか適確に推定すること。

 アイデアが出ても、それが売れる商品となりそうかどうかで、人・モノ・金を投入するかが決まります。経営者は難しい判断を迫られる訳で、うっかり資金をつぎ込んで開発しても売れなければ大きな損害を被ります。下手をすると会社を傾かせてしまいます。

 自動車などの大型商品ですと、全くの新車の場合、開発に2~3年、工場設備の新調まで入るとなると数十~数百億円もの莫大な投資が必要です。最悪でも「失敗はしない」という保証がないと、経営者はGOと言えないのです(現実には多々失敗していますが)。そのために、商品企画担当者は、仮説の中で「これは売れる」というものを強固な論理と信念を持って提案しなければなりません。仮に信念はあっても「なるほど」と思うしっかりとした論理がないと特に大企業では投資が大きく失敗が怖いので、採用されません。

 ここでデータを集め、読み解く(分析する)力が問われます。公開されている経済データ、業界動向・投資動向などのデータは勿論ですが、直接的には顧客から得た市場調査データが判断の基になります。そのようなデータを深く読み、できれば数値的な予測まで出せる知識・経験があると単なる企画書レベルの提案にはなりませんので、信頼度は格段に上がります。理系の方(文系でも数値を扱うのが得意な方)はここで遺憾なく能力を発揮できます。

 ある程度幅広くデータを取っておけば、顧客層も細かく層別して分析し検証できます。

 例えば男女の購入を想定できる新商品のケースで、A~Fの6種類の仮説について2つの評価項目(ユニークさ、利便性)で下図のような分布が得られたとします(Neo P7のポジショニング分析の例)。各仮説の位置は評価項目の平均点を表し、黒が全体、青が男性、ピンクが女性の平均位置を示します。また原点から伸びる矢印は最も購入希望度が高まる方向を求めたもので「理想ベクトル」といいます。これも全体、男性、女性の方向を色分けして描いています。

Neo P7のポジショニング分析の例_新商品のケースで、A~Fの6種類の仮説を評価した結果です_原点から伸びる矢印は最も購入希望度が高まる方向を求めたもので「理想ベクトル」といいます。

 この図から以下のようなことが推定できます。

① 男女で平均位置に大きな差異があり、特に仮説Aではユニークさに、B、Cでは利便性に極端な差が見られます。D~Fでは差はありますが、大きなものではありありません。

② 理想ベクトルの方向も男女で大きな差があります、全体ではユニークさ:利便性の比率が2:1なのに女性では4:1、男性では1:1です。
つまり女性は購入に対してユニークさに極めて高いウェイトをかけ、男性はユニークさと利便性に同様のウェイト(バランス)を求めることがわかります。

③ 最良の仮説は、理想ベクトルの方向から女性はF、男性はAと推測できます。

 このような結論を経験や勘に頼って導くのは絶対に不可能で、正にNeo P7の真骨頂です。

 これはほんの一例で、グループ分けのための「クラスター分析」という統計手法を使えば最も購入してもらえそうな集団を更に精密に抉り出し、どのような特徴の人達かを導き出すことができます。

 また、「コンジョイント分析」という手法を使えば細かく商品を具体化して、購入希望の程度まで求めることが可能です。

 一見難しそうに聞こえますが、易しいソフトウェアがあるので文系の方でも十分に活用して結論を出すことができます。

 大量の画期的な仮説やアイデアを創出して優れた案を選び抜き、客観的、論理的に評価して「このような顧客が」「このような理由で」「このような商品を購入してもらえる」、その購入希望予測値は***、といった提案をすることが「必ず成功する商品企画」となるのです。

数式嫌いの社会人の皆さまへ、文系学生の皆さんへ

 私は理系の大学・大学院を経て文系の大学教員になり、30年以上文系学生と付き合って来ました。最初の専門は統計学でしたから、それを学生諸君に講義で教え、ゼミナールでも実践的にアンケート調査などを多数行って論理的に推論する機会を若い皆さんに提供して来ました。PCの発展と自作のソフトウェアで学生諸君が手軽に統計分析を行えるようになり、これは想像以上に支持されることになりました。

 その後商品企画分野に入り文系学生諸君と企業を結び、産学協同研究を27年間で計110プロジェクトも遂行して来ました。単純平均で年に約4件。多いときは年に8件実施した年もありました。授業、ゼミ、大学院、更に大学の校務の分担もありますから、それ以外の産学協同プロジェクトまでこなすと、死ぬほど大変、という日々もありました。

 文系の学生諸君と付き合うことでわかったことは、

① 文系=数学嫌い(不得意)というイメージがありますが、そもそも数値から嫌いという訳ではなく、「数式」が嫌いで親しめないのです。統計で良く使う和の記号Σを始め、sin・cosやlogなどあらゆる記号表現は特に不評です。広く言うと、抽象度の高い概念や表現が苦手です。

② しかし、言葉、文章での表現は上手で、感性は高く、文字や記号を離れた写真・イラスト・グラフ・等への関心と理解力は高いです。

③ 従って、WordはまあまあですがExcelは苦手、PowerPointは(慣れると)大好きになる方が多いです。

 そこで、神田ゼミ生には徹底的にPowerPointに慣れてもらい、他のゼミがすべてWordで発表させるのに対して、すべての発表、レポート、卒論に至るまでを徹底的にPowerPointで実施させました。

 これにより、カラフルで可愛いイラストや写真などが入ったプレゼンテーションが神田ゼミの伝統及び特技となりました。卒論は大学教務課に提出するのですが、神田ゼミの卒論だけは(他ゼミがすべてモノクロの味気ない文章ばかりなので)とてもカラフルで楽しそう、というのが教務課職員の評判でした。実際、このおかげでどれだけゼミ生のモチベーションが高まり、能力が伸びたか知れません。

 商品企画を目指す文系学生・社員の皆さんは徹底的にPowerPointを学び、プレゼンテーション力を付けましょう。文章に表やグラフ、画像を加えて感性豊かに結果を表現できるようになりますので、意欲が倍加し、楽しみながらシステマティックな手法を駆使できるようになります。PowerPointでもアニメーションまでは必要とされませんが、カラフルに仕上げると、訴求力が違います。

 例えば、次のような説明文がWordで書かれているとします。

文字だけで表現すると訴求力が低いという事例_次のような説明文がWordで書かれているとします

 これを、私はPowerPointで次のように表現しました。

訴求力を高めるためにPowerPointで次のように表現しました。(例)

 どうですか?イメージが生き生きと伝わってきますね。何を調べ、どんなばらつきが生じ、どんな答を出そうとしているかまで、良くわかりますね。文字(フォント)も柔らかいものを使っていますのでソフトに伝わって来ます。

 このようなことが楽にできるのがWordとPowerPointの差です。難しい数式を振り回す必要など全くありませんので、是非この能力を鍛えて物怖じせず活用して下さい。

 商品企画者にとってわかりやすく説明でき、納得させることができるということは、多くの人(特に上の方々)に理解され、共感され、賛同されることにもなりますので、極めて大きなメリットになります。

 また、前にも述べたように、先入観や技術制約が少ないことから、ユニークな発想ができるところが文系の強みですので、それを最大限活かすべきです。

 弱点は、検証力です。下記Neo P7の流れ図で言うと、前半は定性的手法なので、文系の方は一般的に得意ですが、④アンケート調査~⑥コンジョイント分析がアンケートデータによる定量的検証で、特に⑤ポジショニング分析、⑥コンジョイント分析は理論も難しくなるため、つまずく可能性の高い箇所です。

商品企画開発のためのNeoP7システム

商品企画開発のためのNeoP7システム_日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)

 しかし、心配は全く要りません。

 Neo P7ではガチガチの統計学を全部マスターせずとも、ソフトウェアを使って分析しその結果を解釈して活用できれば、十分なのです。沢山の文系学生諸君を教えて来た私の経験から断言できます。

数式好きな社会人の皆さまへ、理系学生の皆さんへ

 私の大学時代の恩師は品質管理という「データに裏打ちされた改善・管理活動」の分野の専門家で、私も名古屋に赴任してトヨタグループの統計的品質管理(Statistical Quality Control、SQC)の指導を多数行い、技術系(理系)の社員の方々と親交を結びました。成城大学でも文系学生諸君を指導する一方、色々な製造業の技術系(研究・開発・設計・品質管理など)の方々と商品企画の面でお付き合いをしました。

 そのような中から、技術系の方は一般的に次のような傾向がありました。

① 専門とそれに関連する分野の知識は深いのですが、一般消費者が顧客の場合、当然ながらマーケティング系の知識が浅く、例えば「アンケート調査」や「インタビュー調査」をどうやるか、については素人です。

② アイデア創出する際もどうしても「できる・できない」「他社より優れているか」が先に来てしまうため、画期的なアイデアがなかなか出ないことが多いです。

③ 性能・成分・寸法・コストなど専門用語と数値(スペック)で表す習慣が付いているので、プレゼンテーションの表現が硬く、わかりにくい傾向があります。

④ 文系の方が不得意なNeo P7後半の「ポジショニング分析」や「コンジョイント分析」にはとても感動され、納得して「活用したい」と思っていただきました。

 学生の場合はそれほど会社や分野の狭い枠に染まっていませんが、上記のような「傾向」はあります。

 理系の皆さんがNeo P7前半の定性的手法に(文系の皆さんに比べると)弱いのは確かですが、きちんと学んでいただくと共に、システマティックなアイデア発想法やインタビュー法、表形式の集約法が多いのでそれらに習熟して使っていただければ、「思いのほか」前半部分も楽に活用できるようになります。これも、長年沢山の技術系の方々とお付き合いした私の経験から、確かなことです。

全ての皆さまへ

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 私は過去約110件もこの方式で商品企画を実行した膨大な実績があります。自動車、住宅、家電、飲食品、生活用品、化粧品、サービス、BtoB商品等々ほとんどの産業分野で、超グローバルメーカーから街の美容院まで実施例は枚挙にいとまがありません。

 Neo P7習得と実践を両方行いますので数ヶ月(標準6ヶ月)を要しますが、必ず200件以上の仮説を創出し、最終商品は5段階で4.0以上の購入意向を実現します(必ず売れる企画案になる、ということです)。それが過去の実績です。

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神田範明

一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会 会長、成城大学 名誉教授
専門分野:商品企画、市場調査、経営統計学、品質管理。 1949年8月生まれ、東京工業大学工学部経営工学科卒、同大学院修了。 その後名古屋商科大学に勤務し、企業での商品開発に関する品質管理の体系化や学生指導の必要性から商品企画の世界に入りました。 1993年成城大学教授となってからは商品企画の手法を体系化した「商品企画七つ道具」を発表(1994年)、実践応用に邁進しながらも次々に手法の開発や改良に努め、神田ゼミを成城大学随一の存在に育て、有名企業との産学協同研究やコンサルティングに現在も休みなく奮闘しています。

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