皆さん、お元気ですか? 神田です。
今回は、日経TRENDYの毎年の「ベストヒット30」というヒット商品ランキングを20年分読み解いて、評価し、分析した結果をご報告します。
ヒット商品の秘密が明らかになり、そこに至る道が見えてきますので、乞ご期待!!
目次
日経TRENDYヒット商品ベスト30とは
皆様は日経が発行している商品情報雑誌「日経TRENDY」が毎年11月に発行する12月号での「○○○○年ヒット商品ベスト30」という記事をご存知でしょうか。11月発行の記事ですから、正確には前年の10月からその年の9月までの間に発売された商品(製品・サービス等すべて含みます)を対象にしています。
ヒットの度合いを編集部が独自の評価基準、
- 売れ行き・・売り上げ、シェアの拡大、集客、売り行き継続の余地
- 新規性・・・画期的な技術、着眼点、売り方の工夫
- 影響力・・・他社の追随、新規市場の形成、世の中への影響
で評価してランキングしたものです。なお、期間前に発売されても、期間内にヒットしたものは対象に加えるそうです。
毎年詳細に調査されたレポートは非常に貴重で、範囲も小さな日用品から社会現象まであらゆる分野に及ぶ広大なものなので、その比較検討のご苦労は想像を超えるものがあります。
私も商品企画を研究しながらさすがに気付いていないヒット商品も多々あり、とても参考になります。
今回、2004年~2023年までのベストヒット30商品×20年=600商品をすべて、私なりの視点で分類し、再評価を試みました(詳しくは次節)。
ちなみに、余談ですがこの調査をしながら「これは!」と思い新たに購入した面白い商品が2つありますので、ご紹介します。
・ハンドスピナー(2017年第10位、キャサリン・ヘッティンガー社(米))
手でクルクル回して遊ぶだけの単純なオモチャですが、3個のLED発光体が各々3通りのパターンに発光し、回すと色々な光の筋を出すので結構はまります。なかなかユニークで、手軽に持ち運べてどこでも気晴らしにクルクル、というので大ヒットしたようです。ただ、シンプルな分、すぐ飽きてしまいましたが(笑)。
・肩掛けスピーカー(SONYほか、2018年第20位)
BLUETOOTH方式を用いたワイヤレススピーカーは2013年の第13位に出ていましたが、これは肩掛け式。ネックスピーカーとも言います。使ってみないと何ともわからないので、そう高くない商品を購入してみました。
中国製、しかも「MONSTER」などという怪しげな名前の?商品です。半信半疑で肩に掛けてみましたが、これが包み込まれるような想像以上の良い響き。感動しました。前から聞こえるのではなく舞台(演奏者)の真ん中にいるような心地よさです。圧迫感がなく、今もこれを掛けて一流オーケストラの奏でる大音量シンフォニーの中心でPCに向かっています。ただし、充電式バッテリーを使うのですが、イヤホンに比べると頻繁に充電せねばならないのが欠点です。
ヒットのポイント「潜在ニーズ発掘度」と「創造性」
さて、600もヒット商品に対して、私は日経TRENDYとは異なる商品企画上の見方で分析をしてみました。
(1)全商品の分類
何しろあらゆる分野にわたっていますので、まずはカテゴリー分類を試みました。一応、次の12カテゴリーです。
必ずしも画然と分けられない商品や、複数のカテゴリーにまたがる商品もありましたが、そこはやや強引に私の一存で決めました。一例を示します。
600商品は以下のように分類されました。
飲食品、家電・IT、エンタメ・ゲーム・イベントの3種が比較的多く、これらで全体の半分以上を占めることがわかります。
(2)各商品の評価
次に各商品を2つのポイント
- 「創造性」
- 「潜在ニーズ発掘度」
で3段階で評価しました。
この2項目は1995年に最初にP7を公表した著書で私がヒットする「感動商品」の2大要素として挙げているものです。当時は「独創的」と「潜在ニーズに適合」という表現でしたが、現在の「創造性」と「潜在ニーズ発掘度」と意図は同じです。
神田編著「商品企画七つ道具―新商品開発のためのツール集」(日科技連出版社)p.14より
① 創造性
他にない卓抜な発想、新鮮さ、面白さ、デザイン等で市場を拓いたかどうか
◎:高レベルの創造的商品を開発し、新市場を大いに拓いた
○:創造性のある商品を開発し、新市場に貢献したと言える
△:余り創造性のある商品とは言えない
② 潜在ニーズ発掘度
従来不明、隠れていたニーズを発掘して新たな市場を拓いたかどうか
◎:良く潜在ニーズを発掘した商品を開発し、新市場を拓いた
○:潜在ニーズを発掘し、新市場に貢献したと言える
△:余り潜在ニーズを発掘したとは言えない
もちろん、情報の乏しい商品もありましたので絶対的・精密な評価はできませんし、大いに迷うこともありましたが、そこはご容赦いただきたいと思います。あくまでも私個人の判断です。
総合評価
なお、「総合評価」は日経TRENDYの順位であり、
◎:1~10位 ○:11~20位 △:21~30位
と分類しましたが、このランキング30位迄に入っただけでも優秀ですので、◎がひどく優秀で、△はダメという意味ではありません。
評価の一例
評価結果の一例を示します。
見えた!ヒットの極意
まず、600商品の各カテゴリー別の、総合評価順位の分布です。
各カテゴリー内での総合評価順位は大差ないですが、◎(上位)がやや多い(1/3以上)のは
- エンタメ・ゲーム・イベント
- 自動車
- 販売・サービス
- 観光・交通・施設
- 家電・IT
となっています。
次に、創造性と潜在ニーズ発掘度の分布を見ましょう。
創造性は◎、○、△がほぼ均等に分布していますが、
潜在ニーズ発掘度は明らかに◎、○が多く(計90%以上)特に◎は43%と多いですね。
ヒット商品に強く寄与していることがうかがえます。
更に、各カテゴリーごとにチェックしてみましょう。
創造性の高い商品は!?
創造性の特に高い商品は、
- エンタメ・ゲーム・イベント
- 趣味嗜好・アート・書籍
- 観光・交通・施設
の3つです。
なるほど、優れたアイデアや感性を発揮して切り開く商品がこれらには際だっています。
潜在ニーズ発掘度の高い商品は!?
次は注目の潜在ニーズ発掘度ですが、
潜在ニーズ発掘度については全般に高めですが、特に高いカテゴリーは、
- 飲食品
- 家電・IT
- 文具・生活用品
- 健康・医薬
- 化粧・美容
- 衣料品
- 自動車
の7つです。
なるほど、私達の生活シーンに密着したカテゴリーが多いですね。
これらの企業の方々は私もかなりお付き合いしてきましたが、最も市場調査や商品企画に熱心で、日々ユーザーのニーズやウォンツを追究されておられます。その成果がヒット商品になっていると推察します。
創造性や潜在ニーズ発掘度が高くなると総合評価順位は上がるでしょうか?
創造性について
まず、創造性です。
創造性が高まると、総合評価順位が上がる(◎がかなり多くなる)傾向があります。
潜在ニーズ発掘度について
次に潜在ニーズ発掘度です。
こちらは潜在ニーズ発掘度の上昇と共に総合評価順位には大きな変化はありませんが、若干の上昇はあります(△が減少、○が増大)。
創造性が高く潜在ニーズ発掘度も高い46商品!!
さて、創造性と潜在ニーズ発掘度のクロス集計をしてみると、潜在ニーズ発掘度の高い商品は創造性が弱い(この2者はなかなか両立しない)ということがわかります。
創造性も潜在ニーズ発掘度も◎の最強レベルの「感動商品」が、下記のリストです。
全部で46品(全600商品のわずか7.7%)です。
これら46商品を見ると、総合評価順位は
◎(1~10位) 23件(50.0%)
○(11~20位) 10件(21.7%)
△(21~30位) 13件(28.3%)
と、圧倒的に最上位の商品が多くなっています。感動価値の大きな商品はヒット商品中のヒット商品と言ってよいでしょう。
20年間を見た時に、創造性や潜在ニーズ発掘度が最近どうなっているのか!?
次に、20年間を見た時に、創造性や潜在ニーズ発掘度が最近どうなっているのかチェックします。
04年~08年、09年~13年、14年~18年、19年~23年の4つに区分してクロス集計してみました。
創造性について
創造性については、明らかに創造性の乏しい商品が減っていることがわかります。◎はそう増えてはいませんが、○が増え、△が減っているのです。
潜在ニーズ発掘度について
潜在ニーズ発掘度については、最初から◎、○が多いですが、最近の5年間は◎が約半数と特に多い傾向があり、喜ばしい限りです。
ここまでのまとめ
以上から、次のことがわかります。
(1) 多くのカテゴリーでは、ヒット商品を生む最大の極意は20年前から現在に至るまで変わらず「潜在ニーズの発掘」です!潜んだユーザーニーズを発掘、発掘、発掘です!今目の前にあるニーズは他の企業も認識していますので、商品企画の最大の仕事ではありません。
(2) 商品カテゴリーによっては、創造性を発揮することでヒットする分野がいくつかあります。特に、「エンタメ・ゲーム・イベント」、「趣味嗜好・アート・書籍」、「観光・交通・施設」の3分野です。これらは独創的なアイデアを多数発想し、魅力溢れる商品を創造することが肝要です。
(3) 創造性と潜在ニーズ発掘度は相反する傾向があり、両方とも優秀な商品はわずかに7.7%です。
(4) 近年、創造性を発揮した商品は増加傾向にありますが、潜在ニーズ発掘商品が減った訳ではありません。
ヒット商品を生み出すには?マーケティングサイエンティストとして活動を行っていく上で大きな威力を持つ商品企画法NeoP7
さて、いかがでしょうか?
日経TRENDYの公表したベストヒット商品30の20年分を分析して、私のかねてからの主張、
【感動価値=創造性×潜在ニーズ発掘度】
がある程度裏付けられた、と思っています。
商品カテゴリーにもよりますが、多くの分野で特に「潜在ニーズ発掘度」の重要性が明らかになったように思います。
では、これらの要素を概念としてではなく、商品として具体化するにはどうしたら良いでしょうか?そのための方法論こそが、Neo P7(新・商品企画七つ道具)です。
・最初の仮説発掘法は潜在ニーズ発掘のツールであり、
・次のアイデア発想法は創造性発揮のためのツールです。
この2大手法の活用により、皆様は数百もの優れた仮説・アイデアを手に入れることができます。
そこから下図のように徐々に検証を重ねて絞り込み、最後は「コンジョイント分析」により最高の感動商品(購入意向5段階で4.0以上!)のコンセプトを築くことができます。しかも「どのくらい買ってもらえるか」をきちんとした数値で、発売前に予測できるのです。これを使わない手はありません。
顧客ニーズに立脚したシステマティックな商品企画を目指している、
モックアップを製作する前に売れるかどうか検証したい、
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神田範明
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